研究概要 |
前歯部反対咬合を有する成人で,歯周組織,咀嚼筋,顎関節などの顎口腔系に異常の認められない者を被験者として,右側大臼歯部に咬合力計を組み入れた即時重合レジン製のバイトブロックを咬合させ,一定の下顎位を保持する.被験者に随意的に等尺性収縮させ、この時の咬合力を視覚的にフィードバックして咬合力をコントロールし,一定の咬合力を持続させるようにする.この状態で歪みゲージを貼付した刺激子を用いて,上顎中切歯に圧刺激を与え,そのときの咬筋,側頭筋の反射性筋活動を双極表面電極を用い,生体電気現象用増幅器(日本光電社製:AB600G)にて増幅後データレコーダ(TEAC MR30またはSONYKS609)に収録すると共にオシログラフにて観察した。分析は刺激直前の咬合力をbackground clenting force:BCFと定義し,圧刺激中の咬合力と筋活動量の変化分を反射応答とし,様々なBCFについて刺激による反射応答を記録した.このような記録を矯正治療前の患者で行った。 現在までの結果からは,従来の報告(Yamamura.C,ら1993年)と同様の傾向が認められる。すなわち,BCFが低い状態では筋活動の反射性増大が認められた。BCFが中等度の状態では症例により筋活動の増大の認められるもの,または筋活動の変化がほとんど認められないものが存在した。BCFが高い状態では筋活動の変化がほとんど認められないもの,筋活動が減少するものが認められた。しかしながら,各症例によるばらつきが大きく,全症例を通した一定の傾向は認められなかった。 今後は矯正治療後に同様の実験を行い,反射応答性の変化が認められるかどうか検討する予定である。
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