我々は、以前、Porphyromonas gingivalisが歯肉溝浸出液中に認められる濃度のトランスフェリンをその鉄源として利用し、増殖できることを見い出し、さらに、P.gingivalisにはトランスフェリンと結合する受容体が菌体表面に存在する可能性を示した。本研究では、P.gingivalis菌体表面に存在しているトランスフェリンの受容体を同定し、その諸性質を調べることによりP.gingivalisのもつトランスフェリン結合性タンパク質の本態を解明することを目的とした。P.gingivalis381とトランスフェリンとの結合性を放射能ラベルしたトランスフェリンを用いて調べると同時に、結合性の定量法を確立した。そして、その結合をScatchard解析したところ、P.gingivalis381のトランスフェリンに対するKd値は1.37μMであり、細胞当りの結合部位数は1.13×10^5であった。また、鉄制限培地に連続的に接種し培養したところ、P.gingivalis381のトランスフェリンに対する結合能は上昇し、鉄添加培地のP.gingivalis381と比較して、鉄制限培地に5回接種した株は約4倍結合能が増加していた。この培養条件下でのP.gingivalisから外膜標品を調節し、SDS-PAGEとウェスタンブロットを行い分析したところ、約20Kdのところにトランスフェリンと結合するバンドが認められた。以上の結果から、P.gingivalisのトランスフェリン結合性蛋白は、鉄制限下での培養により発現し、分子量は約20Kdの外膜蛋白であることが示唆された。
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