研究概要 |
歯肉炎の原因となる病原性菌を検討するために,特定グラム陰性菌の同定を歯牙交換期の小児を対象として行った。特定グラム陰性菌はBacteroides属,Capnocytophaga属,Eikenella属,Fusobacterium属である。歯肉炎発症によりグラム陽性球菌の減少が示唆されていることからStreptococci属も同時に調査した。対象年齢は5才から7才であった。 結果 1.同じ歯肉炎群でも個体間で歯肉縁下試料中の歯周疾患関連細菌の比率および出現頻度は異なっていた。また個体によっては検出されない菌種が存在した。 2.黒色色素産生Bacteroides属は歯肉炎群の永久歯75%,乳歯60%に認められたが,正常群においても永久歯38%,乳歯60%に認められた。 3.Fusobacteriumは乳歯の健康群には認められなかった。永久歯においては歯肉炎群の方が高い頻度で認められた(63%)。 4.Eikenella属は永久歯の歯肉炎群において高い頻度で認められた。 5.Capnocytophaga属は歯肉炎の有無に関係なく存在していた。 6.Streptococcus属は歯肉炎群では出現率が減少する傾向にあった。 以上の結果より,歯牙交換期の歯肉縁下細菌叢は個体間で大きく異なりことが明らかとなり,また乳歯と永久歯においても菌叢は異なることが明らかになった。このことは歯周疾患関連細菌の歯肉炎原因菌に違いがあることを示唆しており,細菌の伝搬時期および定着様式が歯牙交換期の小児の個体間で異なることが示唆された。
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