現在までにラットを用いて妊娠全期間中のシガレット副流煙曝露が、胎仔および出生後の仔の顎顔面頭蓋の成長発育に及ぼす影響について研究し、今回は妊娠期間のどの時期の喫煙がより強く影響するかを実験した。生後11週齢、体重210〜240gのCrj.Wistar系rat 10匹(対象群 2匹、全期間曝露群 2匹、前半曝露群 3匹、後半曝露群 3匹)を対象として、実験群にはシガレット(ハイライト)煙を曝露した。曝露期間は、前半曝露群が腟栓確認後より妊娠10日まで、後半曝露群は妊娠11日より妊娠20日まで、全期間曝露群は妊娠期間の毎日曝露した。 評価は、母体の体重は腟栓確認日より出産日まで毎日測定し、胎仔については妊娠20日目に帝王切開をして摘出し、吸収胚、死胚の観察および体重を測定した後、軟骨・骨重染色を行って評価した。各々の測定結果についてはstudent t-test検定をした。 [結果](1)母体の体重は、対照群と比較して(1)全期間曝露群は妊娠 1日目以降より体重は少なく、4日目以降は有意に少なかった。(2)前半曝露群も同様に妊娠13日目までは有意に少なかったが、それ以後は有為差は認めなかった。(3)後半曝露群では妊娠14日目以降は有意に少なかった。 (2)(1)出産匹数、吸収胚、死胚の数は、対照群と比較して全群とも差は認めなかった。(2)胎仔の体重は対照群と比較して全群とも少なかったが、有意差を認めたのは全期間曝露群のみであった。 (3)軟骨・骨重染色の結果、対照群と比較して前半および後半曝露群ともに全体的に小さく、頭蓋骨の化骨程度も遅れていたが、全期間曝露群ほどではなかった。 今後、さらに曝露期間の違いによる歯・顎骨への影響を詳細に研究していく予定である。
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