研究概要 |
〈研究目的〉口腔の機能的健康に関する現状把握および育児担当者らへの正しい情報提供を行い,母子歯科保健指導の基礎とする。 〈研究計画・方法〉I.保健所歯科相談室におけるアンケート調査の実施 II.口腔内診査の実施 III.「食べ方相談」における実際の臨床症例の検討 〈研究結果〉IおよびII;資料に不備のない648名の3歳児を対象として分析検討を行った。(1)哺乳方法(母乳,人工乳)の違いと口腔の形態(歯列,空隙,咬合状態)との間には統計学的に有意な関係は認められなかった。(2)哺乳方法の違いと食べ方(食物の貯留,咀嚼・嚥下の状態,チュチュ食べ,その他)との間には統計学的に有意な関係は認められなかった。 III.実際の臨床症例50例の来所の主訴,それに関わると考えられる要因は以下のようなものであった。(1)主訴:(1)貯留,食事時間が長い(2)チュチュ食べ(3)かまない,食べ方が下手(4)汚す,食物を口に押し込む(5)その他(口唇口蓋裂など)(2)要因(重複)(1)形態(う蝕,歯列不正,口蓋裂)(2)機能(捕食,咀嚼,嚥下不全,口と手の非協調,習熟不足)(3)生活(食事,おやつ,他)(4)心理(家族関係,食事の強要,友人・遊び(特に外遊びの多少),性格傾向,環境変化,指しゃぶりの代用)(5)発達(身体・精神発達の遅れ,その他) 〈考察および今後の課題〉研究I,II,IIIの結果から,一つの要因のみを取り上げて,乳幼児の口腔に生じているといわれる形態・機能の問題の原因とするのではなく,多角的・発達的視点を持って母子歯科保健指導にあたることが重要と思われた。また、当初研究計画に示した保健所に来所した健常乳幼児のビデオ撮影は困難であることから,今後口腔内状況把握のための印象採得や口唇圧測定などにより,口腔の機能的健康に関する客観的分析を継続する予定である。
|