根未完成永久歯に規格化した外力を加えた場合の、外傷歯ならびにその歯周組織に起こる変化を、非脱灰規格水平断連続研磨切片を用い病理組織学的に観察した。規格化した外力とは、歯槽窩より歯を脱離させ歯槽窩壁表層をカ-バイトバ-にて直接損傷を加えることであり、その後直ちに再植を行なった。これは受傷時に加わる周囲歯槽骨の損傷を想定している。 本研究の結果、臨床的に再植歯の動揺は、周囲歯槽骨に損傷を加えない場合に比べ、生理的動揺になるまで長期間ようした。エックス線所見では、歯根膜腔の幅は再植5週目以降経日的に狭くなり、対照歯の幅に近づく傾向を示した。歯槽硬線についてみると、再植1週目では菲薄化し一部で不明瞭であるが、再植15週目では対照歯に比べ狭いが歯槽窩全周にわたり認められた。 マイクロラジオグラム、蛍光顕微鏡写真による三次元的観察では、再植歯の歯根には表在性吸収を認めたが、広範囲な炎症性吸収や置換性吸収は認められなかった。歯根膜腔の幅は全周にわたり均一な幅であったが、周囲歯槽骨は対照歯に比べ不規則に形成されていた。偏光顕微鏡写真による観察では、再植歯の歯根膜腔に歯周靱帯の線維束と思われる偏光像を認めたが、その出現は対照歯に比べ少なかった。 以上の結果をまとめると、歯槽窩壁損傷は再植歯の歯周組織に広範囲に影響を及ぼすことが確認できた。これは再植ならびに歯の外傷において、歯に付着する歯周靱帯に加え歯槽窩の状態が、その予後を決定する重要な因子であること明らかにした。 本研究の要旨は平成7年第6回国際外傷歯学会で発表予定である。
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