研究概要 |
小児において二大口腔疾患の一つである齲蝕は軽症化し,低年齢児では齲蝕そのものが減少傾向を示している。これは幼児期からの検診制度等の口腔保険指導の充実や,それに伴う早期治療,齲蝕に対する予防処置等の普及,さらに母親の齲蝕予防に対する関心が高まったことなどが考えられる。 しかし歯周疾患は自覚症状がないまま慢性的に経過するため,患児本人ならびに保護者の多くは無自覚,無意識に過ごし,齲蝕に比べ,歯科の受診や指導の機会がつかみにくい。さらに歯周疾患の診査基準についても一定しておらず,低年齢の小児には煩雑である。また予防対策も立ち遅れているのが現状である。この歯周疾患は小児期より何らかの症状を発症し,年齢の増加に伴って進行し,治療されないまま中高年まで放置されると,やがて多くの歯周組織の破壊を招き,歯の寿命に大きな影響を及ぼすことになる。 そこで本研究では,小児期の歯周疾患の診査方法の確立について従来からのPNA index,GIとWHOのCPITN値との相関関係ならびに小児の歯周疾患罹患の状況について年齢,性別,口腔内の状態,歯磨きの習慣・能力等との相関関係について調査し,検討を加えた。その結果, (1)WHOのCPITN値とPNA index,GIとの間に相関が認められ,CPITN値が小児の歯周疾患の指標として応用可能であると考えられる。 (2)増齢とともに歯肉炎の頻度と重症度が高くなる傾向が認められた。 (3)また,歯肉炎の頻度と重症度は口腔内の状態(不正咬合の有無),ならびに歯磨きの能力と関連が強い傾向が認められた。
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