研究概要 |
心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の主な分解酵素の一つであるNeutral Endopeptidase(NEP)による酵素的な代謝に焦点をあて,NEPに対する酵素安定性を高めた誘導体の合成を試み,その評価を行なった結果を以下に示す。 1 我々の構造活性相関研究より得た知見を元に,ANP分解酵素であるNEPに対する安定性を考慮し,(1)NEPの主な切断部位である7位Cysと8位Pheの間にD-アミノ酸としてD-Ala,D-Leu,D-Val,D-Argを挿入した誘導体、(2)またこの7位と8位の間の最適な環の長さを確認するためにGly,β-Ala,Gly-Glyを挿入した誘導体を主にBoc型固相法により合成を行なった。得られた粗ペプチドは最終的にHPLCにて精製を行い,高純度の合成品を得た。 2 生物活性の評価については血管平滑筋弛緩活性及びreceptor binding assayを指標とし,誘導体のED_<50>値,Ki値をそれぞれ測定し,合成品の活性を比較検討した。その結果,D-Ala,D-Valのような脂肪族でややBulkyなD-アミノ酸を含む誘導体が高活性を示し,D-Argの様な陽電荷を持つ誘導体は逆に活性が減少した。また,7位Cysと8位Pheの間がGlyよりも長くなると血管平滑筋弛緩活性もKi値も大きく減少した。最も,活性が高く有望な誘導体は[Arg^6,D-Ala^<7a>,Leu^<12>,Cys^<16>]-α-ANP(6-17)-Phe-Arg-NH_2であり,ANPの約1/20の血管平滑筋弛緩活性を示した。 しかしながら,今回は活性が上昇した原因が化合物の酵素切断に対する抵抗性を示すためかどうかはウサギ副腎皮質標本をもちいた化合物の半減期(t1/2)を測定できなかったので正確な評価は出来なかった。今後,我々の得た有望な誘導体についてさらなる最適化が必要と考えられる。
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