研究概要 |
近年、メキシレチン、フレカイニドなどのように治療濃度域の狭い抗不整脈薬の使用頻度が高まっている。これらの薬物は光学活性体毎に薬効・毒性が異なるため、ラセミ体投与後の光学活性体の体内動態解析のための微量分離定量法を開発することが必要である。まず、薬物を用いた研究に先だってD,L-アミノ酸の高感度微量定量法の開発を行った。D,L-アミノ酸は、蛍光標識試薬、4-フルオロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(NBD-F)で標識化し、固定相にPirkle型のキラル固定相を、移動相にクエン酸-メタノール溶液を用いることにより、高感度に分離定量することができた。次に同様な方法でメキシレチン光学活性体の微量分離定量を検討した。メキシレチンは、カルボキシル基を有しないためPirkle型固定相では保持されにくいと考えられたので他の固定相を用いて検討した。まず標識試薬NBD-Fによりアミノ酸と同様に蛍光標識化した。調整した蛍光標識体は、β-シクロデキストリン結合樹脂を固定相としたカラム(U1tron ES-phCD)を用いて分離することができた(分離係数=1.08)。移動相には、水/アセトニトリル/メタノール(50/10/40)を用いた。さらに、カツボキシル基を有し、不斉中心の炭素のβ位にアミノ基を有する4-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸(GABOB)の光学活性体も、この固定相で分離定量可能であった(分離係数=1.07)。以上のように、蛍光標識試薬NBD-Fと適切なキラル固定相を組み合わせることにより、アミノ基を有する広い範囲の化合物の光学活性体の分離定量が可能になった。
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