膜電位プローブの分配される環境である生体膜のモデルとして、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)、および卵黄レシチンを使い、グラスプレート間に挿入されたこれらの脂質の配向状態を調べた。特に、固体NMR特有の化学シフトテンソルによる構造情報から定量的に脂質分子の配向角度を決定できることが明かとなった。すなわち、脂質極性部にあるP-31原子の化学シフトテンソルを測定することにより、脂質分子の取りうる様々な相構造変化をモニターできるとともに、その配向挙動の確立分布を計算できることも分かってきた。このような解析方法が確立されてきたので、膜電位プローブの配向挙動を解析する最善の実験手法は、そのプローブに存在するP-31原子の化学シフトテンソルの解析である。また、生体膜の膜電位発生機構のなかで、膜電位発生膜タンパク質が注目されており、今後、脂質膜-膜電位プローブ-膜タンパク質の3成分系に関する固体NMR研究が益々重要となってくると考えられる。
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