研究概要 |
非近交系ddYマウス足蹠皮下に病原性ボレリアを接種することによりライム関節炎に類似の関節の腫脹を誘導することに成功した。また、関節の腫脹が見られたマウスでは、膀胱、並びに心臓からボレリアが培養され、本病態がライム病ボレリア感染に起因することが示された。これらの関節では関節滑膜の肥厚と破断が見られ、また好中球の著しい浸潤が見られた。これまでのところ最も重要な感染防御抗原とされる表層蛋白質A(outer surface protein A,Osp A)の免疫学的性状を欧米並びに日本分離株について単クローン抗体を用いて解析し、少なくとも14のOsp A血清型に分類できることを明らかにした。これらOsp A血清型を異にする株間での交差感染防御活性を、このマウス感染実験系を用いて検討し、不活化全菌体ワクチンは同じOsp A血清型株の感染に対しては防御活性を示すが、異なるOsp A血清型株の感染には交差して防御活性を示さないことを明らかにした。この結果は地域ごとに発生が予想されるOsp A血清型の株をワクチンとして用いなくてはならないことを示しており、ライム病流行地におけるボレリア分離株のOsp Aの簡便迅速な性状解析法の必要性が示された。そこでOsp A、Osp B遺伝子PCRに基づくOsp A型別分類、並びに遺伝種同定法を開発した。 これまで全く不明であったライム病病原因子の検索を行い、試験管内で継代したボレリアではOsp Cの発現が減少するとともに病原性が消失すること、また感染マウスより再分離された病原株では、Osp Cの発現が増強していることを見いだした。現在このOsp Cの発現制御機序と、病原機構、並びにOsp Cのワクチン活性を追究中である。
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