研究概要 |
生体膜より遊離したアラキドン酸(AA)は,AAカスケードをへて,プロスタグランジン(PG)へと変換されたり,acyl-coenzymeA(CoA)合成酵素により,アラキドノイル-CoA(AA-CoA)生成に利用されたりする。本研究では,AAからのPGおよびAA-CoA生成の分岐点の調節機構を明らかにする目的で,〔^<14>-C〕AAを基質としてもちいAAからのPGおよびAA-CoA生成を同時に測定できる実験系の確立を試みた。まず,既存のPG合成酵素およびacyl-CoA合成酵素それぞれの活性測定法を用いて,酵素標品の選択と両酵素系に必要なcofactor濃度の設定を行った。当初予定していたウサギ肝臓ミクロソームでは,acyl-CoA合成酵素活性は高いが,PG合成酵素活性はきわめて低かった。一方,PG合成酵素活性が高いウサギ腎髄質ミクロソームでは,肝臓と同程度のacyl-CoA合成酵素活性が観察された。そこで,本実験では,酵素標品として両酵素活性がともに高いウサギ腎髄質ミクロソームを用いることとした。また,cofactor濃度は,20mM MgCl_2,6.7mM ATP,67μMCoA,0.1mM hydroquinone,1mM glutathioneと決定した。以後は,これらすべてのcofactor存在下,AAから生成するPGおよびAA-CoAを同時に測定した。まず,AAからのPGおよびAA-CoA生成とAA濃度,タンパク量および反応時間との関係を調べ,AAは2μM,タンパク量は0.5mg,反応時間は5分間と設定した。さらに,シクロオキシゲナーゼ阻害剤の1つであるインドメタシンは,10〜100μMの範囲で濃度依存的にAAからのPG生成を減少し,AA-CoA生成を増加させた。現在,acyl-CoA合成酵素の阻害剤であるtriacsin Cの影響を検討しており,そののち,AAからのPGおよびAA-CoA生成の分岐点に対する各種活性酵素の効果を調べていく予定である。
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