我々は、骨形成因子(BMP)受容体以降の細胞内シグナル伝達機構を解明するための第一歩として、受容体の自己リン酸化能の検討を行った。大腸菌に大量発現させたBMP受容体蛋白質を用いて、放射活性標識したATPの取り込み量を測定した。また、ATP結合能の欠損した部位突然変異体を作製し、これを対照とし比較検討した。その結果、ATPの取り込み量に優位な差は認められず、今回用いた受容体のみでは自己リン酸化されないという結論に達した。 TGF-βスーパーファミリーに属する細胞増殖因子の受容体には、I型、II型が知られている。最近の報告によると、細部内へ情報を伝達するためにはI型、II型受容体がヘテロダイマーを形成することが必要であり、リガンド結合後、II型がI型をリン酸化し、活性化されたI型受容体が、細胞内基質をリン酸化することによってシグナルを伝えていると考えられている。 今回の実験に用いた受容体はI型に属し、リン酸化されるためには、II型受容体の存在が必要であることが示唆された。我々の解析を進めるためにはII型受容体分子が必要であるが、BMPのII型受容体分子はクローニングされていない。よって、現在我々はBMPの細胞内シグナル伝達機構解明のための第一歩として、BMPのII型受容体遺伝子の単離を進めている。
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