研究概要 |
シオン(Aster tataricus)10kgをメタノールにて抽出し、S-180Aに対する抗腫瘍活性試験を併用しながら環状ペンタペプチド、Astin類の単離を行い、以下に示すようなコンホメーション及び活性相関を解明すると共に、新たなAstin類の構造を明らかにした。 1.最も強い活性を示すAstin BをCHCl_3-MeOH中より再結晶し、X線結晶解析を行い、結晶中のコンホメーションを明らかにした。Astin BはAbu-Pro(Cl)_2及びSer-β-Phe付近でβ-turn構造を有し、類似ペプチドであるシクロクロロチンとは異なったコンホメーションが示された。 2.Astin A,B,CのDMSO-d_6中でのコンホメーションをNOE,NH温度依存性、重水素交換速度などから解析した結果、Astin AとCは類似のコンホメーションを有し、Astin Bとは若干異なり、Astin Bは結晶コンホメーションに近い形であることが示唆された。 3.溶液中のNOEのデータを基に、化学計算を行い、溶液中のコンホメーションを解明した。これより、Astin Bが有するコンホメーションが活性発現に関与していることが示唆された。 4.クルルプロリンの塩素原子の活性への寄与を検討するため、n-Bu_3SnH用い脱塩素体及びジオール体、臭素体などへ変換した。その結果、いずれの誘導体も活性を示さないことから、クロロプロリンの塩素原子の存在が活性発現に必須であることが解明された。現在、天然とは異なる配位の塩素置換誘導体の合成を検討中である。 5.また、Astin類の精製過程において、微量成分として、新たに、Astin F,G,H,I,Jを単離し、それらの構造を解明した。現在、活性試験を検討中である。
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