プロトンポンプ阻害剤OMEPRAZOLE(OMP)をモデル化合物とし、その代謝をヒトまたはラットの肝組織を用いて検討し、肝固有クリアランス(CLint)を産出し、IN VIVOで得られた値と比較することでIN VITROからIN VIVOへの薬物代謝の予測方法の妥当性を検討した。IN VITROのCLintの産出は、肝ミクロソーム及び肝細胞系におけるOMPの代謝速度を肝臓1個当たりの代謝能力に換算することにより求めた。また、IN VIVOは、ラットまたはヒトに経口投与を行ない、AUCを求め、血中蛋白非結合率で補正しCLintを算出した。また、ラットでは、大腿静脈または門脈へ定速静注し、定常状態到達後の血中濃度、もしくは肝抽出率から肝クリアランスを求め、Well-Stirred Modelに基づきCLintを求めた。ラット及びヒトでの代謝パターンは、IN VITROとIN VIVOでほぼ一致し、定性的な予測が可能なことが示された。ラットのIN VITROにおいて、肝ミクロソーム系から求めたCLintが肝細胞系での値より若干大きくなったが、これはOMPの代謝が速いため、膜透過が律速過程になるためと思われる。またIN VITROからIN VIVOのCLintの予測においては、ラットでは、代謝の非線形性、実験系の違いを考慮すれば、比較的良く一致した。ヒトでは、用いた肝キクロソームが高齢者由来のものであり、血中濃度は健常成人のものであったため、後者のCLintの方が大であったが、代謝能の年令による差に関する報告例と矛盾のない結果であった。以上の結果から、OMPの代謝クリアランスに関する、ラットあるいはヒトでのIN VITROからIN VIVOの予測が、かなりの精度で可能であることが示され、今後、安全な医薬品開発への応用が期待できると思われる。
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