研究課題/領域番号 |
06772212
|
研究種目 |
奨励研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
応用薬理学・医療系薬学
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
林 泉 北里大学, 薬学部, 講師 (90172999)
|
研究期間 (年度) |
1994
|
研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
|
配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1994年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
|
キーワード | キニノゲン欠損ラット / 分泌異常 / 高分子キニノゲン / アミノ酸変異 / Brown Narway Nathcliek rat / cDNAクローニング / 一塩基変異 / 発現 |
研究概要 |
本研究においては、遺伝子的血漿中高分子キニノゲン欠損のBrown Norway Katholiek strain(B/N-Ka)ラットの肝臓における高分子キニノゲン(HK)の分泌異常の原因を明らかにすることを目的として、B/N-KaラットHK cDNAのクローニングにより推定された-アミノ酸置換(Ala(163)→Thr)の肝臓からのHKの分泌に及ぼす影響について以下の検討を行った。1.ラットHKの変異cDNAの作製およびその発現と分泌;B/N-Kaラットおよび正常ラット肝臓のcDNAライブラリーよりクローン化した正常及び異常HKcDNAを、哺乳類動物細胞用発現ベクターであるpRc/CMVに組み込み各々に対する発現プラスミドを構築した。さらにB/N-Kaラットの異常HKcDNA内で見出された487番目の一塩基置換を含んだ断片と、正常ラットcDNA内の断片をそれぞれ置き換え、〔正常型→異常型〕および〔異常型→正常型〕のHKcDNAを組み込んだ発現プラスミドもまた作製した。それぞれの発現プラスミドをCOS-l細胞にトランスフェクトし、発現させたHKの細胞からの分泌を測定した。その結果、B/N-KaラットのcDNAをトランスフェクトしたCOS-l細胞の培養上清中のHK量は、正常ラットのHKcDNAを発現したCOS-l細胞の培養上清中HK量の約10%と有意に低値を示した。さらに〔異常型→正常型〕のプラスミドでは細胞外への分泌量が有意に増加した一方、〔正常型→異常型〕のプラスミドでは発現したHKは細胞内に蓄積し、細胞外への分泌量は有意に減少した。この結果から、B/N-Kaラットの肝臓におけるHKの分泌異常は、そのcDNA内の一塩基変異による163番目のアラニンからスレオニンへの一アミノ酸置換が原因となって生じていることが判明した。2.ラットT-キニノゲンの変異cDNAの作製およびその発現と分泌;(1)の検討において明らかにしたアラニンからスレオニンへの一アミノ酸置換によって細胞からの分泌が著しく損なわれることが、HKにおいてのみ認められる現象であるのか、またはHK以外の他の分泌性蛋白質においても同様な現象が起きるのか否かについて調べた。ラットHKとは異なる遺伝子によってコードされているが、約85%の一次構造上の相同性を持ち、また163番目のアミノ酸がHKと同一のアラニンであるラットT-キニノゲン(TK)のcDNAをクローニングした。そして(1)と同様にアラニンからスレオニンへの変異を導入したcDNAをトランスフェクトした結果、TKの細胞からの分泌は有意に減少した。以上の検討から、本研究によって少なくともHKとTKについては、163番目のアミノ酸が蛋白側にとっては肝臓から血中への分泌に必須な要因の一つとなっていることが推定された。今後、アラニンからスレオニンへの置換によって、何故細胞からの分泌が損なわれるかについてさらに究明する。
|