研究概要 |
リポ蛋白(a)[Lp(a)]と動脈硬化の発症との関連については多くの報告がある。今回はApo(a)とplasminogen-との分子的相同性に着目し、Lp(a)がフィブリンあるいは細胞膜受容体へのリジン結合性を介して線溶系を競合的に阻害している可能性を検討した。血清をlysine-sepharose columnで分画し、リジン結合性とリジン非結合性分画とした。そしてこの両分画中と原血清Lp(a)濃度をELISA法により測定した。この結果、高Lp(a)症例12例での血清Lp(a)およびリジン結合Lp(a)濃度は各々77.5±7.6、37.9±18.8mg/dl(mean ± SD)、正常例8例では各々7.5±3.2、2.6±1.0mg/dlであった。リジン結合Lp(a)濃度は総Lp(a)と有意に相関した(p=0.655,n=20,p=0.03)。リジン結合Lp(a)/総Lp(a)比は17〜73%で、この比と総Lp(a)とには相関は認められず(p=0.56)、多様性を示した。また、リジン結合Lp(a)濃度と年齢(p=0.32)、性別(p=0.17)、%理想体重(p=0.18)、総コレステロール(p=0.23)、中性脂肪(p=0.36)、HDLコレステロール(p=0.20)、LDLコレステロール(p=0.42)、空腹時血糖(p=0.16)およびApo(a) phenotype (p=0.51)との間にも関連を認めなかった。さらに高Lp(a)症例のうち動脈硬化性疾患の合併を認めた群(7症例)と非合併群のリジン結合Lp(a)濃度は各々37.1±21.7、39.0±16.2mg/dlであり両群間に有意な差を認めなかった(p=0.81)。 以上の結果より、リジン結合性Lp(a)の多様性が明かとなり、動脈硬化性疾患との関連については否定された。最近、遺伝子変異に基づくリジン結合性の喪失例が報告され、これらの分子的基盤を解明すること、また最近報告されたLa(a)のリジンを介さないフィブリンへの結合とリジンを介する結合機構の動脈硬化発症との関連(差異)について明らかにする必要がある。
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