褥瘡の進行過程における感染の影響を明らかにする事を目的とし、褥瘡のある患者の16例について、患者に承諾の上、全身状態、局所の状態、ケアの方法などについて観察・調査した。併せて、褥瘡表面の細菌培養を行った。 細菌培養の結果、褥瘡表面から培養される菌はMRSAが最も多く9例で、そのうち6例は感染の兆候が少なく縮小傾向にあった。そのことからMRSAが検出されても他の褥瘡の処置と異なるような特別な処置をする必要がないのではないかと考えられた。また、緑膿菌が検出されたのは重篤な腎機能障害と糖尿病を伴う2例であったが、巨大なポケットの形成や大量の膿性の浸出液など特に重篤な感染の影響があった。易感染症となる基礎疾患を持つ患者には、特に緑膿菌感染に注意し、感染したら短期間で急速に褥瘡が拡大したり周囲に大きな膿瘍を形成する事を予測して注意深い観察とケアが必要になる事が推測された。 今後、症例を増やして上記の「感染菌種による感染の褥瘡進行過程への影響の相違について」の検討してゆくとともに、この研究の過程で示唆された以下の様な研究課題について検討を続けてゆく予定である。 (a)免疫反応を抑制する基礎疾患並び治療方法の褥瘡の進行過程と感染への影響 (b)感染兆候としての、発赤、腫脹、浸出液、難治性など局所の肉眼所見の評価基準 (c)褥瘡の進行と感染に関するリスクアセスメントスケールの作成と評価 (d)褥瘡の表面並びに深部の細菌の量と繁殖の評価方法
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