平成6年11月〜7年2月に上記テーマでインタビュー調査を行った。対象者は妊婦24〜34週で切迫早産の診断でJ病院産科病棟に入院し、子宮収縮抑制剤の静脈内注射による持続的管理を必要とし、ある期間床上安静が必要な妊婦と、これらの治療を実際受け分娩に至った褥婦であった。条件に合うと予測される妊婦が入院した場合、病棟スタッフからの情報や回診時の対象者の様子から、ある程度安定したと判断される時点で研究参加を依頼した。インタビューの内容は対象者の承諾を得てテープレコーダーで録音し言語化した。研究参加を依頼した妊婦で精神的に落ち着かないとの理由で延期の希望が2ケースあり、その内1ケースはその2週間後に早産となり退院直前にインタビューを行った。このように切迫早産妊婦の場合身体状態・精神状態が非常に不安定で研究参加依頼に困難があった。そのため対象者数が限られ、最終的に妊婦4人、褥婦2人であった。インタビュー、医療記録からのデータ、研究期間中の病棟入院者の状況の参加観察を元にグランデッド・セオリーの手法により分析した。その結果は以下の通りである。長期入院する妊婦の身体的・心理的状態は、診断・入院・治療の開始による混乱期(子宮収縮抑制が効果を現すまで持続)、治療が安定して効果をあげている安定期、長期の安静臥床や治療薬による副作用が増大し身体的・心理的限界に達する限界期の3期に分けられた。これらの3期を通過する条件は、妊娠週数と胎児の発育状態に影響されるその時点で早産に至った場合の児の生存や障害の可能性、薬物療法による不快な症状の程度、それ以前の不妊症治療や流早産の既往などによる切迫早産状態の心理的な受入れ、安静臥床による身体的・心理的拘束感であった。妊婦の健康な子どもが生まれて欲しいという希望はほぼ一貫していたが、胎児に対する感情のスタッフへの表出はこれらの状況の影響を大きく受け否定的になったりし動揺がみられることがわかった。
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