災害発生にともない「人命と財産の保全」の重要性が再認識されてきたが、災害に関する研究はこれまでの耐震工学などハード的解決だけでなく、人間や生活・住居をとりまく社会科学的事象についても解決する必要がある。そこで、本研究は地震災害など非常時における人間が住居を通していかに行動し生活するかを探り、そこから日常における安全な住居のあり方を考究することを目的としている。 本研究では、すでに「釧路沖地震」における地震発生時の人間の行動と意識に関する調査や昭和23年以降の建築物に関する災害調査を行っている。本年度は「北海道南西沖地震」をとりあげ、「北海道奥尻島における「複合災害」の進展過程を住居および人間中心に解明する」「復興過程における住居の位置づけを明らかにする」の2点にしぼって研究を遂行した。具体的には、住居・人間の立場から生活環境に関する復興過程の解明と、災害復興過程における住居の役割および住居の復興の解明である。その結果、北海道南西沖地震では生活環境に関する復興過程は時間経過でみた内容から7段階に分けられ、被害と住居、人間の行動や気持ち、経済活動などが相互に関係し成立していることを明らかにした。また、住居の場は時間経過とともに4つの場(住宅→避難所→仮設住宅→道営住宅)を変遷した。復興過程における住居の役割については、「住居の安定」によって生活復興が促進されることが明らかとなり、災害復興には安定した生活が行える住居の供給が重要であることがわかった。なお、これらの成果は日本家政学会および日本建築学会などで発表している。 今後は、「阪神・淡路大震災」をはじめ「北海道東方沖地震」「三陸はるか沖地震」など、地震災害における人間と生活の観点から地震災害とその復興過程における住居の役割に対する提言を行う計画である。
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