研究概要 |
食物繊維の利用法についてはいろいろな角度から研究されている。本研究では食物繊維の供給源としてニンジンに注目し、食パンに添加した場合の利用性について検討した。実験方法は、生およびゆでたニンジンを凍結乾燥粉末とし、小麦粉に対してそれぞれ1,5,10%添加した食パンを製造した。これらの食パンについて比容積とテクスチャーを測定し、ニンジンを添加していない食パン(基本配合食パン)と比較した。テクスチャーの測定には新規に購入したクリープメーターを使用し、歪率70%における応力値を測定した。さらに嗜好性を検討するために官能検査を行い、色、外観、硬さ、歯触り、におい、おいしさなどを比較した。 食パンの比容積を測定した結果、ニンジンの凍結乾燥粉末を添加した食パンは、1%および5%添加した場合、生、ゆでとも比容積の値が基本配合食パンより高く、膨らみが良くなったが、10%まで添加すると比容積の値は低下し、膨らみが悪くなった。次にクリープメーターによってテクスチャーを比較すると、生のニンジンを添加した場合は、10%添加の食パンが他の食パンに比べ、有意に硬かった。ゆでたニンジンの場合は、1%添加食パンが有意に軟らかく、10%添加食パンが硬かった。官能検査では、生のニンジンを、1%および10%添加した食パンではにおいが悪く、10%添加では味も悪いという評価になった。ゆでたニンジンを添加した場合は、10%添加で硬いという結果になったが、においや味は基本配合食パンと同じ評価を得た。以上の結果からニンジンの凍結乾燥粉末は、食パンに10%まで添加すると、においや硬さの点でわずかに劣るが、食パンとして十分利用できると考えられる。酵素重量法によって測定したニンジンの食物繊維量から食パン中のニンジン由来の食物繊維量を計算すると、10%添加食パンで一斤約10gとなり、ニンジンの食パンへの添加は、食物繊維源として有効であると考えられる。
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