研究概要 |
研究の目的は、液体カラムクロマトグラフィーの手法を用いて繊維への油脂の吸付着現象を解明することである。今回の研究の要点は次の通りである。(1)これまで繊維を粉末上でカラムに充填していたのを布を棒状に巻いてカラムに充填する。このようにすることで、従来から他の手法によって布のままで行ってきた実験データとの比較が可能となった。(2)測定上の問題から、油脂の代わりとして油溶性染料メチルエロ-(p-ジメチルアミノアゾベンゼン)を用いた。以上の点を踏まえ、今回は基礎的データの収集に努めた。 実験条件として、(1)繊維の違いを比較するため、親水性繊維:キュプラ,疎水性繊維:ポリエステルを取り上げた。(2)油溶性染料の吸付着に、水がどのように関与するのか調べるために、送液溶媒としてエタノール/水の混合割合を100/0,50/50の2つの条件を設定した。その結果、どちらの繊維に対してもエタノール単独よりも水混合系の場合に染料の吸着量が減少する傾向が認められた。従って、水は染料-繊維間の親和性を低下させることが示唆された。次にエタノール/水(50/50)系にポリビニルアルコール(PVA)を加えその影響を調べたところ、キュプラでは染料吸着量がさらに減少したが、ポリエステルでは吸着量がやや増加する傾向にあり、繊維によってPVAの作用が異なることが認められた。 今回は、液体カラムクロマトグラフィーの有用性を確認することに時間が費やされたため、今後は、水(水和層)の影響とともにPVAの作用について解明できるようにデータを蓄積する予定である。
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