愛玉子水溶性多糖のゲル化機構の解明と利用性の向上を目的として実験を行い、以下の結果を得た。 1.愛玉子水溶性多糖中のペクチンエステラーゼの性状 愛玉子水溶性多糖中のペクチンエステラーゼはpH7.5で活性が高まり、さらに塩化ナトリウムの存在下においても活性が高まったことから典型的な植物由来のペクチンエステラーゼであることが認められた。またpH5においても活性が認められた。このpH5は通常愛玉子ゼリーを調製する場合の水抽出液のpHに相当することから、ペクチンエステラーゼがゲル化に関与している可能性が示唆された。 2.愛玉子水溶性多糖の熱安定性 愛玉子ゲルの20〜30℃間のクリープ曲線からコンプライアンスカーブを求め、マスターカーブを合成した。これより愛玉子ゲルは温度分布関数が広範囲にわたり、20〜30℃の範囲においてはLMペクチンゲルより温度依存性が大きいことが認められた。愛玉子加熱ゲルは未加熱ゲルより破断応力が著しく減少した。硬さがほぼ等しい2%愛玉子ゲルと0.8%LMペクチンゲルの融解温度を比較すると26.7℃と29.5℃で近似した値であった。また、愛玉子ゲルは濃度が高くなるに従い融解温度も上昇し、一般に利用される4%濃度は59.0℃であった。愛玉子ゾルの分子量分布をGPCによって経時的に測定したところ、ゾル調製後加熱することによって経時的低分子化が抑制されることが認められた。 3.愛玉子水溶性多糖の酸安定性 愛玉子多糖ゲルに酸を添加するとゲルが凝集し、液体相が分離した不均一な状態になり物性測定は困難であった。愛玉子ゲルのもつ特有のテクスチャーを生かしながら安定性のあるゲルを調製することは利用性を向上させるためには不可欠であり、今後の検討課題である。
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