研究概要 |
1.食品中ナイアシンの存在形態の分別 (1)各種穀類中ナイアシンの系統別分類 ヒトに難利用性の結合型ナイアシンを含む穀類の中から,米糖,トウモロコシ,小麦フスマを試料として,異なった条件下で加水分解{酸・アルカリの種類x規定度x加水分解時間}を行った. 酸・アルカリの種類:硫酸と水酸化ナトリウム,規定度:0から1Nまでの0.1N刻み,加水分解時間:0分,10分,20分,30分,40分,50分,60分で,穀類 3種x酸アルカリ 2種x規定度 11通りx加水分解時間7通りの計462通りの試料を調整した. また,一般的な食品として野菜,動物性食品を選び,同様に試料調整を行った. (2)生物利用性の評価 L.plantarumによる生物的利用性の評価を行った.ナイアシン定量結果は,各穀類において,それぞれの加水分解条件によって異なったナイアシン値を示した.それぞれの試料溶液中のナイアシン誘導体の分別定量は,高速液体クロマトグラフィーにより,現在分析中である.このデータをリンクさせ,食品中結合型ナイアシンの利用型と難利用性の抽出ボーダーラインを定めることにより,ヒトに利用可能なナイアシンだけを測定することができると考える. (3)動物性食品に含まれるナイアシンの主たる存在形態であるNADの定量上の問題 NADをアルカリ中で加水分解し,定量に供する場合に,NADはHNAという物質に一部変化する.そこで,NADからHNAを合成,精製を行ない,この物質のL.plantarumに対する生物的利用性の評価とナイアシンに対する拮抗阻害性について検討を行った. 生物利用性はなく,完全にNADのナイアシン活性は消失していたが,構造類似による拮抗阻害は,認められなかった.
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