辛味を基質グルコシノレートと酵素ミロシナーゼの観点から検討することを考え、酵素法による総グルコシノレートの定量を行うとともに、内在するミロシナーゼ活性を測定し、グルコシノレートとの関連について調べた。また、HPLCによりグルコシノレートの組成分析を行い、以下の結果を得た。 1.酵素法により、市販野菜の総グルコシノレート含有量を測定した結果、貝割大根、クレソンでその含有量が高く、キャベツ、大根、ブロッコリーが中程度の含有量であり、白菜、ラディッシュにはごくわずかしか含まれていなかった。 2.貝割大根とクレソンはグルコシノレート含有量が同程度できわめて高い値を示したが、ミロシナーゼ活性が貝割大根が高い活性であるのに対し、クレソンはきわめて低値を示した。このことより、辛味の強さはグルコシノレート含有量とミロシナーゼ活性の両者により決定されるものと推察された。 3.だいこんの部位による辛味の違いを検討したところ、ミロシナーゼ活性は部位による違いはほとんどないが、グルコシノレートの蓄積が先端部にいくほど大きかった。このことより、大根の部位による辛さの違いは基質となるグルコシノレート含有量の違いによるものと推察された。 4.グルコシノレート溶出液をミロシナーゼ処理してHPLCに供し、ミロシナーゼ処理前のHPLCパターンと比較することにより、グルコシノレート組成を比較した。その結果、貝割大根と大根には同じ2成分が認められたが、Brassica属では、グルコシノレートの組成における類似性がないことが予想された。
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