本研究は、これまで関東関西など中央中心の観点が強調されていたため、看過されてきた北海道における近代登山の成立と展開過程をあきらかにするために行われた。その際、大学 高等学校・中学校等の教育機関の整備拡充とそこに設立された山岳部やスキー部、旅行部といった校友会の運動クラブの活動に注目した。資料として日本山岳会の「山岳」、北海道帝国大学のスキー部、山岳部の「部報」、「記念」誌等を収集し、分析を行った。本年度はとくに日本および北海道に近代登山が導入された1910年代から、1930年代にかけての期間について冬季のスキー登山の発達のプロセスと技術・用具的観点からその特徴をあきらかにする作業を行い、その研究成果の一部を発表した。本研究の作業を通じて、スキーをはやく導入し、経験と研究をつみ重ねた北海道帝国大学スキー部とそこから分化独立した山岳部を中心に、技術的革新を伴う冬季登山が展開されたこと、同時に「山とスキー」誌など専門月刊雑誌を10年間にわたって刊行し、全国各地に影響を与えるなど、日本における近代登山成立期に重要な役割を担っていることがあきらかになった。
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