本研究、シンクロ競技の採点方法をより客観性・妥当性の高いものとしてゆくために、現在の競技方法と採点方法の問題点を明かとし、今後の方向について検討することを目的とした。 日本水泳連盟シンクロ公認審判(国内A級・国際)10名および強化コーチ(ナショナル・上級)5名を対象に、現在の採点方法と競技方法に関する意識調査を行った。また、競技方法がもっとも類似しているフィギュアスケート競技、とくに女子シングルとアイスダンシングとの比較研究を行った。 その結果、現競技方法の問題点は、(1)フィギュア競技の必要性が乏しい(2)選手の実績(ネ-ムヴァリュー)の評価への影響(3)テクニカルルーティン(TR)とフリールーティン(FR)の採点基準の違いの明確化(4)競技順のグループ化による評価への影響(5)テクニカルメリット(Tン)とア-ティスティックインプレッション(AI)の採点の明確化、があげられた。 また、他の採点競技との比較からシングル競技の特長は、(1)音楽の重要性が非常に高い(2)専門技術の難易度に関する基準が明文化されていない(3)器械体操での落下や転倒、フィギュアスケートての転倒のように明らかな失敗がない(4)競技レベルの差と比べて点数が接近している(5)演技構成の流行の影響が大きい(6)減点数ではなく、競技レベルのカテゴリー別での順位採点である、といえる。 これらの結果から、シンクロ競技をよりクリアな競技としてゆくためには、(1)フィギュア競技を廃止する方向へ進める(2)各技術に対する難易度をおおまかでもよいから明文化させる(3)ルーティンは2パネルでのジャッジングを行う(4)TRはTMの比率を従来の60%よりも高くし、技術点重視の意向を強め、FRとの個別性を明瞭にする、という方向に押し進めていく必要があろうと結論づけられた。
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