研究概要 |
本研究では,小児期の体温調節反応の変化について検討し,機能そのものに変化があるのか,あるいは機能の発現様式に差異が生じているのかなどをあきらかにするとともに,運動の実施が小児期の体温調節機能の発現に影響を与えているかについて検討を加えた.実験は,人工気候室において環境温を直線的に上昇させる条件(20℃から35℃に30分間で上昇,湿度は50%,気流は0.2m/sec以下)を設定した。被験者は,小学校の体育の授業以外に運動を実施していない10〜12歳の男児6名(非運動時)と少年サッカークラブに在籍する10〜11歳の男児4名(運動群)であった.実験中の着衣は,Tシャツと半ズボン,裸足とした.測定は,1)皮膚温10点:30秒ごと(前額,胸部,上腕,前腕,手背,手指先,大腿,下腿,足背,足指先),2)直腸温:30秒ごと,3)深部体温:5分ごと(前額),4)血流量(前腕部),5)全身発汗量(実験前後の体重変化),6)心拍数:30秒ごと,7)温熱感(9尺度):5分ごと,9)耳内温:5分ごと,以上の項目を実施した.運動群のうち2名は,明らかな肥満児であった(体脂肪率37%).非肥満の運動群の2名は,非運動群とほぼ同様な皮膚温変動を示していたが,肥満の運動群では,本実験条件下において直腸温も高いレベルで推移し,手足の皮膚温も最初から高いレベルで変動するなど,体温変動が環境温の変動に追従した変化を示しにくい傾向が示唆された.日常定期的な運動を実施している者とそうでない者においては,環境温の変動に対する体温変動に明らかな違いは見出せなかったが,肥満児では,20〜35℃程度の環境温変動に対しては,末梢部の皮膚温もあまり変動を示さなかった.この点に関しては,体脂肪が多く身体の断熱性に優れているからなのか,あるいは末梢部の皮膚血管反応性に差異があるからなのか今後さらに検討する必要がある。
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