日本代表として国際試合の経験のある選手を中心として、競歩という運動の特性が、走行とは異なるのかあるいはほどんど差がないのかについて検討した。以下の結果が得られた。 ・競歩によるトレッドミル走行は十分可能であり、選手も特に違和感なく測定を行うとこができた。ただしレーススペースに近い早い速度では1%程度の弱い傾斜をつけたないと滑らかな歩行が行えない。この傾斜が測定に及ぼす影響については確定できなかった。 ・最大下から最大までの強度における血中乳酸濃度の変化は、特に走行と異なる点は見られず、乳酸作業閾値も判定できる。また乳酸性作業閾値の運動強度が20kmや50km競歩の運動強度よりもやや低い程度であることも、走行による乳酸性作業閾値とマラソンなどのレースペースとの関係と同様であった。したがって競歩によるトレッドミル歩行によって乳酸性作業閾値を求めることは、競歩選手にとっては有益である。また競歩選手にはトレッドミル走行ではなく歩行を用いるべきである。 ・歩行と走行の異なる点として、トレッドミル歩行では最大酸素摂取量が高い値が出ないことあが認められた。一流選手でもトレッドミル歩行では走行による場合と比較して、1割程度酸素取得量が低い状態で疲労困憊に達した。このことは運動を制限する因子が中枢性の呼吸循環機能よりも末梢の酸化代謝能力であることを示している。歩行の場合は走行よりも動員される筋量が少ない。その少ない動員される筋の能力がより直接運動能力に影響するといえる。カテコールアミンの応答は必ずしも末梢というよりは全身の運動強度に依存している印象である。
|