研究概要 |
運動による活性酸素の増大は、赤血球の破壊にも関与していると考えられ、実際に、赤血球の破壊が赤血球膜の脂質過酸化と高い相関があることが確かめられている。また、ビタミンEが運動による赤血球膜の脂質過酸化を抑制する可能性が考えられるが、ビタミンE摂取が運動による赤血球の破壊や新生に及ぼす影響については明らかにされていない。本研究は、数日間の激しい持久性トレーニングを実施し、ビタミンEの摂取が赤血球の破壊や新生に及ぼす影響を、赤血球年齢の指標となる赤血球2,3-diphosphoglycerate(2,3-DPG)動態から明らかにすることを目的とした。 被験者は、男子大学生長距離選手12名で、ランダムにビタミンE摂取群およびプラシーボ摂取群とし、激しいトレーニング期間前後の安静時に採血を行い、次のような結果を得た。1)赤血球数はプラシーボ群ではトレーニング前後で有意な差が認められなかったが、ビタミンE摂取群ではトレーニング後に増大した。また、トレーニング後にビタミンE摂取群がプラシーボ群に対して有意に(p<0.05)高かった。2)赤血球2,3-DPG濃度は、両群ともにトレーニング後に低下したが、両群間で有意な差は認められなかった。 これらの結果、ビタミンE摂取は激しい運動による赤血球の老化を完全には抑制できないが、破壊を軽減することが示唆された。
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