研究概要 |
本研究の目的は、持久的鍛練者を対象に、1週間のトレーニング中止がインスリン分泌反応に関与しない糖利用(NIMGU)に及ぼす影響を明らかにすることであった。男子大学長距離選手6名(年齢;21±0.4才、最大酸素摂取量;55.6±1.3ml/kg/min)を対象に、トレーニングの中止前および1週間のトレーニング中止後に、静脈糖負荷試験を行い、Bergmanのminimal model analysisを用いて、NIMGUを算出した。対象群として、一般健常人13名(年齢;22±0.8才、最大酸素摂取量;42.4±1.7ml/kg/min)にも同様に静脈糖負荷試験を行った。その結果、NIMGUは、トレーニング中止1週後においても、以前としてトレーニング中止前の値とほぼ同じ値(前;0.018±0.003min^<-1>,後;0.022±0.004min^<-1>)を示し、また、トレーニング中止後のNIMGUは、一般健常人(0.014±0.001min^<-1>,P<0.05)に比べ高値を示した。経口糖負荷試験やインスリンクランプ法により評価されたインスリン感受性(インスリン分泌反応に関与する糖利用)は、トレーニングの中止1周後では、一般健常人のレベルまで低下することが報告されているが、本研究で検討したインスリン分泌反応に関与しない糖利用は、トレーニングの中止1週では低下しないことが初めて明らかとなった。 以上のことより、長期間のトレーニングによって養われたインスリン分泌反応に関与しない糖利用の高進は、少なくとも1週間温存されることが明らかとなり、怪我などにより休養を強いられた場合、パフォーマンスの低下などに対して不安を抱く鍛練者にとって朗報となるものと思われた。
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