研究概要 |
前年度申請課題において申請者は以下の点について明らかにした。(1)運動細胞(MN)プールの出力特性(Mslp)と同名筋Ia入力増加に伴うMNプールの出力効率を示すと考えられるM波閾値以下での刺激強度におけるH反射の刺激発達曲線の変化率(Hslp)との比率(Hslp/Mslp)がMNプール興奮性評価の新たな指標となりうること。[Electromyogr Clin Neurophysiol.1994,34:477-489](2)従来からMNプール興奮性の指標とされてきた[H反射閾値/M波閾値]は、同名筋および拮抗筋の随意収縮時における最大H反射/最大M波(Hmax/Mmax)が示す有意な変化に比較して、同一条件下において必ずしも有意な変化を示さないこと。すなわち、MNプールの興奮性変化は主にHslpの変化として表されること。[Eur J Appl Physiol,1994,69:21-25]これらの結果を踏まえて、本年度申請課題では個人間における相反抑制効果量と安静時のMNプール興奮性の関係について研究を進めた。安静時MNプール興奮性には大きな個体差があることが認められる。また、個体内における試験H反射サイズに依存した条件刺激効果の量的差異が報告されていることを考え合わせると、個体間でも試験H反射のサイズ(これにはHmax/Mmaxを用いることが多く、これは同時に安静時MNプール興奮性の指標となる)に依存した条件刺激効果の量的差異が存在する可能性が示唆される。そこで、各被験者のヒラメ筋におけるHmax/Mmaxを求め(同時にHslp/Mslpも測定する)、これに対する一定の抑制性入力(10%MVCの持続性足関節背屈)がもたらす量的効果について調べた。その結果、Hmax/MmaxおよびHslp/Mslpが大きくなるにつれて背屈による試験H反射の抑制量は増加し、試験H反射が最大M波の50%を越える当たりから減少に転ずるパターンが示された。すなわち、個々の被験者における試験H反射サイズ(安静時MNプール興奮性)に依存した条件刺激効果の量的差異が認められた。(投稿準備中)
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