従来の研究から、ラットヒラメ筋は、後肢懸垂により、顕著な萎縮をきたすと同時に、収縮特性も変化することが知られている。本研究は、このような収縮特性の変化を、ヒラメ筋の単一筋繊維を用いて、収縮蛋白のミオシン重鎖の変化の観点から検討を加えた。実験には、10週齢のラットを用いた。4週間後の後肢懸垂後、ヒラメ筋を摘出し、組織分析により筋繊維組成を算出、また、電気泳動により単一筋線維のミオシン重鎖(MHC)分子種の変化を検討した。 4週間後の肢懸垂により以下の結果が得られた。 (1)コントロール群と比較して、体重増加の抑制と筋重量の有意な低下がみられた。 (2)type IIa線維の割合が有意に増加した。 (3)後肢懸垂後、MHC IIaのみを有する単一筋繊維はみられなかった。 (4)MHC IIdおよびMHC IIbの合成が確認され、これらの分子種は単一筋線維内でMHC IIaと混在することが明らかとなった。 以上の結果から、後肢懸垂により、MHC IIaのみを含む単一筋線維内にMHC IIdまたはMHC IIb分子種の合成が生じ、分子種混在型の筋線維が増加したことが示唆される。同時に、組織学的に同定されたtype IIa線維は、数種類のミオシン重鎖分子種を含有することが推察される。
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