内蔵脂肪量を推定する方法として、本研究では体密度法による総脂肪量と皮下脂肪量の差から算出する方法を採用している。まずこの推定法がどのような精度で測定可能かを検討するため、MRI法で実測した皮下脂肪体積と超音波Bモード法による皮下脂肪厚と体表面積から推定した皮下脂肪体積との関係について検討した。その結果、本研究で採用している推定法の精度は非常に高いことが明らかとなった。本研究では上記の方法を使って、約3ケ月間におよぶ有酸素トレーニングが内蔵脂肪量や皮下脂肪分布に及ぼす効果について検討した。被験者は中等度肥満(体脂肪率が30%以上)にある若年女性および閉経前の中年女性であった。トレーニングは自転車エルゴメーターを用いた有酸素運動およびエアロビクス運動であった。このような運動を週に3〜4回の頻度で実施した。本研究ではトレーニング期間中、通常の食生活を保つよう指示したため、トレーニングによる体重の減少は有意であったにもかかわらず、除脂肪量にはまったく変化は認められなかった。従って、有酸素トレーニングによる体重減少は体脂肪量の低下によるものであった。本研究では体脂肪量の有意(P<0.01)な変化を内蔵脂肪と皮下脂肪に分けて検討した。今回の結果では、有酸素トレーニングによって皮下脂肪量には有意(P<0.01)な低下を観察したが、内蔵脂肪量に明らかな変化(P>0.05)は認められなかった。本研究では内蔵脂肪量や皮下脂肪量の推定だけでなく、MRI法を用いた腹部断層画像の撮影を行ない、有酸素トレーニングによる内蔵脂肪横断面積および皮下脂肪横断面積の変化についても検討した。その結果、MRI法で測定した皮下脂肪横断面積はトレーニングによって有意に低下したが、内蔵脂肪横断面積にはトレーニングによる有意な変化は観察されなかった。トレーニング前後で測定した安静時代謝量に変化は認められなかった。
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