研究概要 |
本研究は、水中歩行が高齢者の歩行機能改善に対して有効であるか否かを明らかにすることを目的とした。本研究に参加した被験者は全員が女性であり、その内訳は、様々な筋力測定と水中歩行トレーニングを実施する高齢者運動群(T群,n=27、67.2+5.8歳)、測定のみに参加しトレーニングは実施しない高齢者非運動群(C群,n=8、64.3+3.8歳)、測定のみに参加しトレーニングを実施しない女子大学生群(S群,n=10、19.5+1.2歳)である。水中歩行トレーニングは、従来の方法に比べて浅い水深(水深70cm-90cm、参加者の腰水位)を用い、週2回の頻度で7週間T群についてのみ実施された。一回の時間は55分間、内容は15分間のストレッチを含む準備運動、30分間の水中歩行、10分間のストレッチを含むクーリングダウンであった。各種測定は水中歩行トレーニングの前後、すなわち7月初旬と9月初旬にそれぞれ行なわれ、測定項目は、陸上における10m全速力歩行と25mの全速力水中歩行のタイム測定、Cybexllマシンによる静的及び動的筋力測定(脚挙上筋力、脚伸展力、脚屈曲力、足関節底屈力、足関節背屈力)等であった。各種測定の結果、7月の各種筋力値にはT群とC群の間に有意な違いは認められなかった。9月の各種筋力値はT群がC群に比べて有意に大きく、またT群の9月の筋力値は7月の筋力値に比べ有意に大きいものであった。S群の筋力値は7月と9月で有意な違いは認められず、ともにT群、C群のそれより有意に大きかった。歩行速度については、T群についてのみ有意なタイムの短縮が認められた。 これらの結果は、水中歩行トレーニングが、脚筋力、歩行速度などの歩行機能改善に有効な手段であることを示唆している。また、トレーニングに参加した被験者から、『足取りがしっかりした』、『階段でつまづかなくなった』などの感想が得られ、これらの機能改善を如何に定量化するかが今後の課題であると思われる。
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