研究概要 |
ICR系雄マウスを用い,ギプス固定解除後の筋の重量ならびに収縮機能の回復に及ぼす運動の効果を検討した.ギプス固定は両後肢足関節を中間位に固定し,気管は4週間とした.運動は走運動(分速15m,角度10度)とアイソメトリック運動(体重の50%の重りをつけ,傾斜60度の金網の床面で維持)でいずれも1日30分,週4日行った.ギプス固定解除2日目から2,4週間行う群と解除後2週目から2週間行う群を各運動群にもうけた.ギプス固定により足底筋,ヒラメ筋重量は減少したが,解除後4週目でほぼ対照レベルにまで回復した.回復期間のいずれの運動も足底筋重量の回復を早め,とくにギプス固定解除直後から運動を開始した場合において高い効果が認められた.しかし,ヒラメ筋重量に対する効果は認められなかった.足関節可動範囲の回復は運動により促進されたが,その効果は動的な走運動において顕著であった.ギプス固定により最大筋力の低下が見られたが,足底筋では重量当たりの最大筋力に各群間で差が見られなかった.一方,ヒラメ筋の重量当たりの最大筋力はギプス固定後減少し,解除後の期間の延長に伴い増加する傾向を示した.また運動はこの回復を早めた.疲労耐性はギプス固定により足底筋,ヒラメ筋ともに減少し,解除後回復する傾向を示したが,ヒラメ筋の疲労耐性の回復は足底筋に比べ遅い結果が得られた.運動は疲労耐性の回復を促進する効果を示したが,その効果は足底筋において高い結果であった.単縮の時間経過は両筋において明らかな変化が見られなかった. 以上の結果から,ギプス固定解除後の筋の萎縮や収縮機能の生理的な回復に対して運動は促進効果を持ち,とくにギプス固定の影響を受けやすい最大筋力と疲労耐性の回復に効果が認められた.また,運動の開始時期はギプス固定解除後の早期から,運動様式は静的より動的な運動で期待される効果が得られる可能性が示唆された.
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