研究概要 |
前方への上肢伸展動作でパワーを発揮する際の、力および速度要因を検討した。被検者は、健常な男性20名(すべて本学専任教職員:年齢22歳〜33歳、158cm〜172cm,50kg〜65kg)、脚伸展パワー計測用に開発されたレッグパワー((株)竹井機器工業)を用い、6種類の上肢伸展速度(0.2m/秒、0.4m/秒、0.6m/秒、0.8m/秒、1.0m/秒、および1.2m/秒)で、速度ごとの上肢伸展パワー(両腕)を測定した。各測定は、肩関節の最大伸展位および肘関節の最大屈曲位より上肢を最大努力で前方へ伸展させることにより行った。測定の主旨を説明し、測定に慣れさせた後、15秒程度の休息をはさみながら、少なくとも4〜5回本試行を繰り返させ、その最大値をその速度での上肢伸展パワーとした。得られた速度と上肢伸展パワーより、速度-上肢伸展パワー曲線を求め、上肢伸展パワーのピーク値、およびピーク値発揮の際の速度を2次回帰により算出し、ピーク値、およびピーク値発揮の際の速度を求めた。 腕伸展パワーのピーク値は144.4±40.8watt、また、ピーク値発揮の際の速度は0.88±0.09m/秒であった。同年代(18歳〜33歳)の健常な男性33名の脚伸展パワーのピーク値、およびピーク値発揮の際の速度(1008.4±325.6watt:1.20±0.23m/秒、平成4年度科研費奨励研究A報告)と比較すると、腕伸展パワーは脚伸展パワーの14.3%、ピーク値発揮の際の速度は73.3%であった。本研究の被検者は、どちらかといえば、座業が中心の業務を日々行っている者であったので、今後、日常の身体活動量、および活動様式の異なる者を測定する必要があると思われた。また、力曲線・速度曲線の立ち上がりの検討を加えること、および、他の測定方法(腕エルゴメーター駆動等)における腕パワーとの相互比較をし、腕伸展パワー測定に適した方法を考案すること等、今後の課題であると思われた。
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