本研究では、緑内障患者における身体活動が眼圧に及ぼす影響を検討するため、全国の盲学校や弱視学級における緑内障生徒の身体活動の実施状況に関する実態調査、および、色々な形態の運動が眼圧に及ぼす影響を測定することを目的とした。この測定では、使用した空気式眼圧計による正確な眼圧の測定方法をまず確立することを目的とした。 結果は以下の通りであった。 1.盲学校や弱視学級では、緑内障や網膜剥離等、激しい身体活動を眼科医から制限されている生徒に対して、他の生徒とは異なる授業内容を実践しているところがほとんどであった。内容は、軽スポーツなど、主に運動強度の低い種目が多かった。また、眼科医との連携などはあるものの、具体的にどの程度の運動強度の身体活動が眼圧に悪影響を及ぼさないか等に関する指導や助言などを受けている学校はほとんど無く、保健体育担当教諭が、各生徒の状況をみながら運動をおこなわせているのが実態であった。 2.空気式眼圧計を用いての測定方法の確立に関しては、連続して5〜6回の測定を行いその平均値を測定結果として用いることにしたが、測定値のばらつきがかなり大きくなる場合があったり、測定に時間がかかること等、問題点が残った。また緑内障患者では、眼圧が高すぎて今回用いた眼圧計では測定できない場合があった。 3.各種の運動を実施させた際の眼圧は、緑内障患者、および晴眼者において、軽運動(ストレッチング)、有酸素運動(50%VO_2max・30分間の自転車エルゴメーター運動)ともに、運動前に比べて運動直後および30分後において有意の変化はみられなかった。晴眼者を対象として、高強度のウエイトトレーニングをおこなわせた場合の眼圧は、運動前に比べて運動直後に上昇する傾向があったが、有意の変化ではなかった。また各種の運動において、心拍数や血圧(最高・最低)と有意の相関はみられなかった。
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