研究概要 |
余暇ライフスタイルが、高齢者のQOL水準にどのように影響するのか、スポーツ定期実施群(愛好者群)(N=305)と一般高齢者群(N=529)を対象とした調査にもとづき実証的解明を試みた。分析結果ならびに知見を以下に示す。 1.スポーツ・運動習慣の有無がQOL(LSIZによる)水準に影響するか否かをこころみるために、一般高齢者群とスポーツ実施群のQOL水準を比較したところ、実施群の得点が高く、統計的に有意な差が認められた。ここにスポーツ・運動習慣がQOLに影響するものであることが推察されたが、週1回以上の実施者を選び、条件を一定にし再度検討したところ、実施群(N=299,98.0%)は一般群(37.1%)の水準をなおも上回っていた(p<.01)。従って、QOL水準の相違はスポーツ参加のみの影響によるとは言い難く、その他要因の影響を広く検討していく必要性が示唆された。 2.余暇活動参加の状況(10領域)を量的な面から把握し、各群の活動参加パターンをみると、一般群ではスポーツ活動は低調であり、マスメディア接触や外出など消極型、発散・気晴らし型の活動が中心となっていた。スポーツ群では、スポーツ活動への積極的参加という点を除き同様の傾向を示した。各領域参加度とQOLの相関分析の結果、QOL向上に貢献の可能性が高い活動内容は、両群共に社会参加型、教養型、発散型の活動であった。一方、スポーツ活動とQOLの関連は強くなく、期待に反する結果であった。さらに、余暇活動の質的側面を測る余暇満足度尺度によれば、身体面の健康、体力向上に関する余暇の現状評価、充足度は、QOLとの関連が弱く、他の心理社会的欲求(親和、自尊、達成、学習欲求など)の充足の程度がQOL水準を大きく左右することが明らかになった。 3.重回帰分析を適用し、デモグラフィクスや社会経済要因、健康、社会対人関係誘因などを説明変数に加え、余暇関連変数の影響を検討した結果、余暇関連変数、とりわけ余暇生活に対する満足度の貢献が著しく高いことが明らかになった。余暇生活の充実が生活全般の充足感を支えるものであることを確認した。
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