1.目的 本研究は、非言語的感情伝達の基礎的形態である「動作の模倣」が、模倣者の感情を強化し、他者の感情への認知を強化するという仮説の元に、運動の模倣に伴う模倣者の気分の変動と非言語的感情表出の一つである顔面表情に対する認知の変容の関連性を数量的に把握しようとしているものである。 2.方法 (1)被検者 実験群:短大女子学生33名 対象群:レクリエーションスポーツ(卓球・バドミントン)の授業に参加した短大女子学生109名 (2)調査1:感情を喚起する運動の模倣による気分の変動:実験群が「悲」「喜」の基本的感情質をイメージ素材とした一連の運動を複数の実験補助者と伴に繰り返し実施した。運動を模倣する前後に、一過性の気分を測定する「POMS日本語版」を実施した。 (3)調査2:顔面表情の評定:ドラマ、映画、報道映像などから抽出した15種類の表情標本を作成。被検者群は調査1の運動を模倣する前後に、紙面に印刷された刺激標本がどのような感情状態を表出しているかについて、基本的感情価評定用紙を用いて評定した。 3.結果 レク・スポーツ実施後と「喜」をテーマにした運動フレーズの模倣後では、運動者のよく鬱的気分、怒り、混乱が有意に低減し、気分の活動性が有意に強化された(p<.05)。 「悲」をテーマにした運動フレーズの模倣および反復後、運動者のよく鬱的気分は有意に強化され、気分の活動性は低下し、気分の混乱が増した(p<.05)。 レク・スポーツ、「悲」の模倣、「喜」の模倣という活動の種類によって表情評定の変化の仕方に差違があるようであるが、そのパターンについて目下、分析・検討中である。
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