研究概要 |
本研究の第1の目的は,高齢者の生活諸条件の特徴及び加齢に伴う体力の変化特性を明らかにすることであり,第2の目的は高齢者における体力と生活諸条件の関連を検討し,体力低下により重要な関与を示す改善可能な条件を明らかにすることであった。対象者はF県に在住し,高年大学,長寿祭及びすこやか教室に参加している60歳以上の活動的な高齢者452名であった。高齢者の体力特性を明らかにするために,22項目からなる体格・体力テストを実施し,高齢者の生活条件を捉えるために,38項目からなる生活条件調査を行った。 1.60歳以上の高齢者において,男女とも量・周育及び長育は加齢と共に小さくなり,体脂肪に関しては女性においてのみ加齢と共に減少する傾向が認められた。性差に関しては長育及び量・周育において男性が女性よりも有意に大きく,体脂肪は女性が男性よりも有意に多かった。体力の筋機能,肺機能,関節機能及び平衡機能は男女とも加齢と共に低下し,四肢及び全身の敏捷性は男性高齢者においてのみ加齢と共に低下する傾向が認められた。また,筋機能,肺機能,関節機能及び全身の敏捷性に関しては性差が認められ,関節機能に関しては女性が男性よりも優れており,その他の体力では男性が女性よりも優れていた。 2.生活条件に関しては,現在及び過去の仕事状況,喫煙及び飲酒習慣等に性差が認められた。また,男性では運動習慣の有無に,女性では運動実施頻度,運動継続年数等に年代間で違いが認められた。 3.高齢者の体力に影響を及ぼす生活条件は現在の運動習慣の有無であり,継続的な運動の実施は高齢者における加齢に伴う体力の低下を遅延させる効果があると推測された。
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