研究概要 |
高齢男性(61-71歳、平均年齢68.8歳)につき、椅子座位股関節90度屈曲、膝関節伸展位で、右足関節90度の背屈および底屈を行わせた。課題は最大等尺性張力の30%の力での急速なパルス状の等尺性収縮であった。筋張力は足底に固定した金属板と接する荷重変換器により測定した。主動筋(背屈:前脛骨筋、底屈:ヒラメ筋)から表面筋電図を導出した。背屈と底屈の各々で力-時間曲線と筋電図を12回加算平均し、これを2度繰り返した。加算平均結果を用いて、筋電活動開始から力発生までの時間(MDT),および力発生からピークまでの時間(TPF)を計測した。MDTとTPFの全被験者平均を同一条件での成人群と比較した。 筋活動開始からの力発生の潜時(MDT)は底屈より背屈が長かった(背屈:48.2ms、底屈:10.0ms,t=5.39、p<0.001)が、いずれも成人群との間に差は認められなかった。力発生からピークまでの時間(TPF)は、背屈より底屈が延長する傾向があったが有意ではなかった(背屈:162.1ms,底屈:176.1ms)。TPFは背屈、底屈ともに、成人群より高齢群で延長した。すなわち、背屈では成人が121.8msにたいして高齢が162.1ms(t=3.70、p<0.01)、底屈では成人が138.7msにたいして高齢が176.1msとなった。 足関節の背屈筋と底屈筋は姿勢保持と歩行に特に関わりが深い。両筋とも成人に比べて高齢群では収縮速度の遅延が見られたが、それは特に力がピークに達する速度で起こることがわかった。この結果が高齢者の運動機能の低下とどう関係するか、これが今後の課題である。
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