申請者は、近代日本の地域交通体系に関する研究を大テーマとして取り組み、それを実証する指標に局地鉄道を位置づけた。本年度の成果としては、まず局地鉄道の路線プランから近代型地域交通体系の確立を推定する方法を論文として公表できたことをあげねばならない(地理学評論67-10)。これによって申請者の行なってきた一連の研究のフレームワークが確立されたといえるであろう。当該論文では、近代型地域交通体系の形成には「鉄道国有化」ち「交通統制」が重要な画期となっていることが示唆されている。また、当該論文は日本地理学会研究奨励賞の受賞が内定している。 また、本申請時に課題とした明治期の「鉄道国有化」に関わる交通体系の変容については、瀬戸内海地域を事例に実証研究を行なった。その概要は1994年度鉄道史学会大会(於、東京学芸大学)で口頭発表し、歴史地理学会機関誌『歴史地理学』に投稿した(現在審査中)。また、四国に関する事例報告を『奈良大学紀要』23号に投稿・掲載された。当初、比較研究として関東地方における河川舟運と鉄道との対抗・協調関係を調査するつもりであったが、前述の路線プランの問題と商品流通との関連から深める必要を感じ、山口県宇部・小野田地域の工業化と輸送に関する研究を行ないつつあるが、こちらは次年度申請費によって完成させたいと考えている。 また、これら一連の研究に関する展望論文も執筆中であり、次年度申請費で完成させる所存である。
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