研究概要 |
平成6年3月に学位取得後,隆起山地の長期的な侵蝕過程に内在する法則性を発見・理解する目的で,山地を開析する支流の地形形成プロセスの研究に取り組んでいる。この研究課題を進めるには,1.山地の原地形を復元し,現在の地形との比較を行い,長期的な山地の地形変化の総量(各支流域の総侵蝕量)を評価するという積分的なアプローチと,2.現在進行しつつある流域の地形変化プロセス,すなわち,地すべり・崩壊による斜面変動プロセスと河川プロセスとを定量的に把握してゆく微分的んアプローチを行い,3.両者を結びつけて理解してゆくことが必要となる。以上の3つの各アプローチに関連して,今年度は,以下の3点の研究成果が得られた。1.中部山岳地域の木曽山脈と美濃三河高原において,山頂小起伏面の地形・地質の現地調査を行い,山頂小起伏面の起源を検討し,山地の原地形面(準平原)とみなしうる面の分布を明らかにした(須貝,1995).本研究とこれまでの赤石山地での研究(須貝,1990,1992)により,中部山岳地域中・南部の原地形の復元が可能となった。2.地すべりによる斜面変動量に関する資料の収集・分析を行い,地すべり土塊の分布特性について発表した(Sugai,et.al,1994,Ohmori and Sugai,1995).なお,崩壊による斜面変動量と河川による物質運搬量の評価は中途段階である。3.積分的・微分的アプローチを統合する手がかりとして,流域の河床縦断面形の数理的性質(関数形)と河川流域の高度分布特性(平均高度,面積高度比積分値など)との関係を吟味した(投稿準備中)。以上の結果は,隆起山地を構成する支流域の地形形態特性を丁寧に吟味することにより,隆起山地の長期的な侵蝕過程に関する理解が確実に深まるとの見通しを与えるものである。
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