研究概要 |
本年度は,石狩低地早来町源武および十勝平野中札内村中札内の2カ所に模式露頭を設定し,各地点において後期更新世以降の火山灰土の試料を多くの層準から採取した.さらにこれらの試料について粒度組成,一次鉱物組成,粘土鉱物組成,植物珪酸体含量に関する分析を行った.その結果,以下のような知見を得ることができた. 1)降下テフラ,黄砂,砂丘砂などある特定の給源からもたらされた風成堆積物が,粒度分布に明瞭なピークを持つのに対して,火山灰土の粒度組成は明瞭なピークを持たない幅広い粒度分布を示す. 2)火山灰土中には,火山ガラスの風化変質によって生成されたと考えられる,非晶質の粘土鉱物やハロイサイトなども多く認められるが,石英、長石,スメクタイト,クロライトなどの火山ガラスの風化変質では生成されないような結晶質の粘土鉱物も認められた.このような結晶質の粘土鉱物は広域風成塵起源であると考えられる. 3)火山灰土の一次鉱物組成には,北海道南部の火山では認められないような鉱物組み合わせが認められることから,火山噴出物以外にも周辺の基盤岩などからもたらされた砂粒子が混入していると考えられる。 4)火山灰土の粒度組成および,年代既知のテフラ層間の火山灰土の層厚から求めた火山灰土の堆積速度は,時代によって変化する.その変化は,石狩平野では東方に位置する火山が活発に活動している時期に堆積速度が速く,粗粒成分が増える傾向があり,十勝平野では,東方の日高山脈で氷河が形成されていた氷期に堆積速度が速く,粗粒成分が増大している. 以上の結果から,火山灰土は,火山噴出物の一次堆積物,周辺の河床や裸地からもたらされた風成粒子,広域風成塵および堆積地で生成された生物起源の物質や粘土鉱物など複数の給源からもたらされた粒子によって構成され,その割合は時代によって変化していることが明らかになった.
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