研究概要 |
庄内平野東縁活断層系沿いの南北走向の新期断層変位地形(比高1〜2mの西向きの小崖)を横断して調査溝(トレンチ)を掘削した。掘削地点は山形県飽海郡松山町朴ノ木沢の水田で、トレンチの規模は長さ35m、幅7m、深さ3.0mである。トレンチは完新世の小扇状地上に位置し、付近では最終氷期以降の扇状地上に断層変位の累積も認められる。トレンチ壁面では比較的分級の良い礫層とシルトの互層が観察された。トレンチ最下部の礫層は多量の樹木片を含み、また各層準のシルトには腐植層が挟まれ、これらは地層の年代決定のための^<14>C測定に利用された。トレンチ西端には、走向N70°E、傾斜10°Nの出羽山地側を上昇させる低角逆断層が現われ、断層付近ではシルト・砂の撓みや引き摺りが認められた。この断層は地表下約1.5mの黒色腐植層を東上がりで約1.2m変位させているが、それより上位のシルト層、礫層は変位させておらず、1894年庄内地震の痕跡(断層・地裂等)は地表近くでは観察できなかった。黒色腐植層より下位の礫層には、地震時の振動によるとも考えられる堆積構造の乱れが見られるが、詳細は不明である。十数点の^<14>C年代測定を行ない、最小部礫層から得られた樹木片は7260±130y.B.P.(Gak-18532)、黒色腐植層は8150±170y.B.P.(Gak-18537)、地表下約1.2mの小扇状地構成層中の樹木片は6740±220y.B.P.(Gak-18529)の年代をそれぞれ示す。以上の観察結果から以下の結論を得た。(1)「日本の活断層」(活断層研究会,1991)で確実度IIIとされていた松山町付近の活断層は、新期断層変位地形の明瞭な確実度Iの活断層である。(2)この新期断層変位地形は、東上がりの低角逆断層によって形成されたものである。(3)この低角逆断層は約7000〜8000年前に活動し地震をおこした。(4)約8000年前以前にもこの低角逆断層は活動した疑いが持たれるが詳細は不明である。(5)1894年庄内地震の地震断層はトレンチ掘削地点では現われなかった。
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