1.環境教育の新たな枠組みの考案 当補助金で購入したEnvironmental Education誌をはじめ、既存の文献、および国内の実践事例の報告などを概観した結果、現在の環境教育、とくに国内の実践者たちの多くが自らの位置を見失いがちな実状と、それに付随する問題が明らかになった。その解決に向けて、環境教育において、自然科学・技術、個人、社会の3つの分野を想定する新たな枠組み(NIS)を考案した。これは、3分野相互のつながりやかかわりを重視するホリスティックな教育の枠組みという点で独自であり、当補助金による成果として、もっとも重要なものと考える。 2.新たな枠組みの提示・試行、考察 環境教育プログラム作成や環境教育プロジェクトの計画など、環境教育の諸現場でこの新たな枠組みを元に評価した結果、この枠組みが「客観的な」評価に有効であるとともに、評価する/される関係を越えて、実践者が自らの実践をふりかえるといった「自己評価」のための枠組みとしても活用できることがわかった。 3.今後の展開・展望 NISという、この新たな枠組みに一定の有効性があることは確認されたが、枠組みの内部構造、また他の枠組みとの相互関係など、明らかにすべき問題が山積している。特に、従来表面的には受け入れられてきた環境教育の国際的な枠組み、たとえばベオグラード憲章、トビリシ会議、モスクワ会議、地球サミットなどが、相互にどのような関係にあるのかの比較研究は、今後の環境教育の分析・評価に大きな示唆を提供するだろう。
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