1.教師の信念と教授行動との関係について、調査研究を行なった。信念として、授業観、学級観、子ども観、社会科学力観および評価観を取り上げた。37名の小学校教師を対象とした調査の結果、教師は、問題解決力に代表されるような高次の認知的能力と意欲・態度の情意領域および社会性(協調性)を重視する傾向が明かになった。また、教授行動との関係は明確ではなかった。 2.この調査研究を踏まえて、小学校5年生担当教師(教職経験5年)の追跡研究を行なった。その結果、授業観、学力観が授業設計、実施段階においては反映し、他の信念はあまり反映していなかった。また、信念は子どもの反応に応じてそのレベルを変えていることも示唆された。さらに、教授経験のない学年においては、授業観や学力観は授業を積み重ねるにつれて、具体化する傾向があることも示唆された。 3.初任者教師の状況判断のあり方を追跡研究した。状況判断のあり方は、ビデオ中断法を用いた。その結果、初任者教師は、学年当初、学級経営的な視点で授業をとらえていたが、2学期以降教材の内容の伝達という狭義の教授へ視点が移行することが示された。また、学年当初は特定の子どもに関心が向いているのに対し、徐々に行動に関心が向くようになることも示された。このように、初任者教師は近視眼的に教室で生起する問題に対して対応行動をとっているが、それが教室全体を見渡せるようになると考えられる。そのプロセスは、学級経営的視点から教授の視点へ、そしてその両者が統合されるということであると思われる。
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