カイコを用いた遺伝実験の開発を行った。 開発した遺伝実験は、単性雑種、検定交雑の交配実験である。いずれも「錦秋×鐘和」という品種を用いた。ここで着目した形質は形蚕(優性)、姫蚕(劣性)である。 単性雑種の交配実験では、「錦秋(形蚕)×鐘和(姫蚕)」が雑種第1代であるので、それを自家受精することにより、雑種第2代を得るものである。その結果、雑種第1代は全て形蚕であり、雑種第2代は形蚕321個体姫蚕112個体となった。この結果をχ^2検定すると、理論比3:1とみなしてよいこととなった。このことより、この交配実験はメンデルの法則の優性の法則と分離の法則の確認実験として適切であることが明らかになった。 検定交雑の交配実験では、単性雑種の交配実験で得られた雑種第2代の形蚕の遺伝子型が優性ホモであるかヘテロであるかを検定するために、雑種第2代の形蚕と劣性ホモの姫蚕を交配した。その結果、形蚕120個体、姫蚕110個体が得られた。この結果χ^2検定すると、理論比1:1とみなしてよいこととなり、検定した形蚕はヘテロであることが分かった。この交配実験は、結果があらかじめ誰にも分からないため、生徒の探究実験として適切である。 以上の2つの実験は、従来紹介されている突然変異個体を用いた交配実験の問題点を改善し、中学、高校での実践を可能なものにした。従来の交配実験では、桑の飼育期間が限られるし、突然変異個体のため飼育も困難であるといった問題点があった。今回開発した交配実験は、通常使われている品種で行う、飼育を人工飼料で行うといった改善を行ったものである。
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