研究概要 |
【目的】本研究の目的は,教師の授業計画(授業設計)と授業過程及び学習成果との関係を認知科学的アプローチによって検討することである.つまり,具体的には,2人の教師によって実践された同一教材の体育授業を対象に,その教師行動に差異が生じるのか,生じるとすれば,それは意思決定過程に関する教授スキルとどのように関係するのか,さらには授業計画段階での変数,特に,教師の授業観と授業についての知識とどのような関係にあるのか,そして,それが児童の学習行動や学習成果にどのような影響を及ぼすのかについて,検討を加えた. 【方法】対象教師は,1名の小学校教師と1名の中学校教師で,A教師は39歳(17年目)・男・小学校6年生担当,B教師は32歳(7年目)・男・中学校3年生担当の教師である.対象授業は,2名の教師の学級担当クラスの授業を1授業ずつ,合計2授業である.資料収集は,(1)教師の授業設計についての知識を検討するインタビュー,(2)VTRによる授業中の教師行動及び子どもの学習行動の観察記録,(3)授業成果の観察記録,(4)教師の意志決定過程を検討する授業実施後のインタビュー(再生刺激法)の4段階によって行われた. 【結果と考察】教師の授業設計の知識を検討した結果,体育教師は,(1))教材内容に付いての知識,(2)授業方法らついての知識,(3)子どもについての知識,の3つを領域として持っており,授業設計の段階でこれらが複合的な形で表出されており,その知識は学校段階・担任性・教材の授業経験等によって異なることがインタビューによって明らかになった.そして,教師の行動(即応的行動)は,その教師が持っている知識の質・量によって異なり,それが授業成果に影響することが確認できた.特に,子どもや教授方法についての知識は発問過程における意思決定サイクルに,教材内容についての知識は学習指導の方法論に強く影響を及ぼすことが明らかになった.
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